第8章 親子
その瞳を見れば、嘘偽りのない物を表していた。やがて、杲良はその場から逃げるように書類室を出て行った。
それを確認した柚姫は、ふぅ~…と息を吐いて安心した表情を浮かべる。きっと柚姫は、どこか不安があったのだろう。
「……大丈夫でしたか?」
黒子が心配そうな表情を浮かべながら柚姫に尋ねる。そんな様子を見た柚姫は、クスと笑い大丈夫…と黒子に伝える。
「杲良さんとは、仲が悪いんだね。兄妹で…敵意を感じるよ。」
「そうですね、血の通った者同士なのにかなり、ギグシャクですね。でも、それでいいんです。」
柚姫は、悲しげな瞳をしていたがすぐに、いつも通りの瞳に戻る。氷室は、柚姫の頭を優しく撫でる。急に頭を撫でられた柚姫は、目を丸くさせる。
「あの…氷室さん?」
「あ、もしかして嫌だったかい?」
柚姫の反応に、氷室は慌てて手を引っ込める。しかし、柚姫は首を左右に振り、嫌じゃないです…と僅かに頬を緩めそう伝える。
「とても温かいです。人の温もりは、良いものですね。」
「はい、柚姫さんの言う通りです。人は、とても温かい存在です。」
黒子も微笑んで、柚姫に言う。それは、氷室も同様だった。柚姫は、ふと外の太陽を見ると先程よりも高く昇っていた。
「そろそろ、お昼だね。折角だし、リビングに向かおうか。午後は、術の練習をしよう。」
「はい、宜しくお願いします。」
「俺も、術の練習をしようかな。」
という事で、柚姫、黒子そして氷室は、午後に術の練習をしようと予定を決めて、リビングへと移動するのだった。