第8章 親子
「こんな所で、何をしている?君は、僕の大切な人じゃないか…。」
「…叔父様、気持ち悪いです。書類室から出て行って下さい。」
柚姫の声は、今まで聞いた声とは全くの別だ。声のトーンがあまりにも低い。重い空気へと変わっていく。柚姫は、目を細め杲良を睨み付ける。
けど、睨み付けた所で何もならない。杲良は、手を伸ばし柚姫の手首を掴もうとしたとき、氷室が逆に杲良の手首を掴む。
「嫌がっているんで、止めてあげてはどうですか?」
氷室は、杲良に睨み付ける。氷室が睨み付けた事によって杲良の表情が一気に変わる。表情が険しくなり氷室を睨み付ける。
「君には関係ない話だ。その手を退けろ。でなければ、君を斬るまでだ!」
杲良から出た言葉が斬るというのだ。杲良は、本気だ。今、片手で剣を抜き取ろうとしているのだから。
「Svanire.」
柚姫の周りから風が起こり、杲良に向かって風が襲い掛かる。いとも簡単に、杲良は書類室の扉の方に飛んで行った。うっ!と僅かに苦しげな声を出す杲良は、ヨロヨロとやがて立ち上がる。
「叔父様、それ以上…私に近付かないで下さい。洸汰がいたら、叔父様を斬り殺していましたよ?」
「何を冗談を…。」
「冗談ではありません。本気です。」
杲良は、嘲笑うかのように言っていたが、柚姫の瞳は真っ直ぐに杲良の姿を捉える。柚姫の瞳は、真剣でその瞳を見れば、心臓を突き刺さるような感じがする。