第7章 訓練
紫原は、隣に立っている氷室に本を渡す。氷室は、どれ…と観察しながら本を受け取る。すると、氷室は難しそうな表情を浮かべる。
「…コレは…英語ではないな…。」
氷室は、この本に書かれている文字を読もうとするが、英語ではないため、読めないという事になってしまった。仕方なく、紫原は柚姫に本を返す。
柚姫は、席を立って言った。
「それでは、私は失礼します。また、明日…。」
柚姫は、リビングを出て行く。その後を追い掛けるように、一度光瑠に頭を下げて、リビングを出て行く洸汰。このリビングに残ったのは、光瑠、賢次、優花そして黒子達だ。
優花は、嬉しそうな表情を浮かべて柚姫達が出て行った扉の方を見ていた。
「最近の姫様は、理彩(りさ)様に似てきましたね。」
「あぁ、そうだな。」
優花の言葉に、同意する光瑠は微笑んでいた。
「理彩……??誰だ、ソイツ…。」
青峰は、光瑠に質問をする。そう、今まで聞いた事もない名前だからだ。他の皆も気になって仕方ないみたいだ。
「理彩様は、光瑠様と姫様の母様です。」
母様…確かに賢次の口から聞こえた。皆の動きが止まる。そう、この世界に来てから黒子達は、叔父の存在は知っていたが両親は知らなかった。
「そういえば、両親を見てないな…。」
笠松がポツリと呟くように言うと、当たり前だ…と声を出す光瑠。光瑠の瞳は、悲しみと寂しさを表していた。
「俺達の両親は、もう…この世に居ない。だから、俺が頭首であり城主である。」