第6章 強さ
その様子を見ながら歩いている緑間と高尾。
「凄い、賑やかだな~。」
「そうだな。平和な世界だと錯覚してしまうのだよ。」
そう、緑間の言った言葉はある意味正しい。この賑やかな場所にずっといれば、あの突然変異と戦わずに、平和に暮らしていけると思ってしまう。それは、柚姫も感じてはいた。
しかし、それをけして口には出さない。3人が、街の中を歩いていると遠くの方から、ダダダッ!と走ってくる小さな子供達。柚姫を見つけると、姫様だー!と騒ぎながら柚姫の所に来て、足にすがりつく。
柚姫は、クスと笑いその子供達の頭を優しく撫でる。
「柚姫ちゃんって、人気者だな~。」
「あの様子だとかなり信頼されているのだよ。」
高尾や緑間が、そんな事を言っている。その時、ある若い女性が柚姫にゆっくりと近付いていく。その若い女性の腕の中には、小さな赤ちゃんを抱いていた。
「姫様、生まれたばかりの私の息子です。」
若い女性は、嬉しそうに柚姫に報告すると、柚姫も微笑んでその若い女性に抱いている赤ちゃんにゆっくりと手を近付けさせる。
人差し指をその赤ちゃんの手に、近づけるとギュッ…と弱々しいのに力強く柚姫の人差し指を握る。とても微笑ましい光景だ。
「おめでとうございます。」
柚姫は、若い女性に向かってそんな事を言い、ゆっくりと人差し指を放していき、右手に緑色の光を集め、やがてゆっくりと右手を広げると、其処には小さな御守りがあった。
柚姫は、その御守りを赤ちゃんの上に置く。