第5章 守る者達
どうしたものか、と急に紫原を心配する柚姫。紫原は、食べ終わったゼリーのお皿を机の上に置く。そして…。
「ねぇ、敦って呼んでくれなきゃ…ヤダ~。それに、歳が近いから敬語もいらない~。」
子供のようにだだこね始める紫原。その姿が意外なのか、一瞬だけ柚姫は目を丸くさせる。だが、すぐにクスと笑い優しく紫原に言った。
「分かったよ。改めて、宜しく敦。」
「うん、宜しく~柚ち~ん。」
またまた変わったニックネームに、笑う柚姫。紫原は、何がそんなに可笑しいのか分からなく首を傾げる一方だ。柚姫は、隣に座っていいよ、と紫原に声を掛け、紫原は柚姫の隣に座る。
すると、紫原はあることを思って柚姫に質問をする。
「柚ちんは、なんで戦うの~?ほら、女の子だし~。」
紫原の質問に、柚姫は驚くかと思いきやそんな素振りを見せず、窓から見える月を眺めて当たり前のように答える。
「私は、この国を…皆を守りたい。そんな想いがある。私が知る限り人間が生き残っているのが、此処の結界の中だけ。早く、突然変異を倒して平和な世界が来て欲しい。皆で、幸せな時間を過ごしたい…それだけ…なんだ。」
柚姫の瞳は、真っ直ぐで迷いない。柚姫は、守りたいという強い想いがあるからこそ、戦えるのかもしれない。それは、紫原には感じていた事だ。
やがて、紫原はスッとベットから立ち上がり、柚姫の頭を優しく撫でる。突然、頭を撫でられた柚姫は、目を丸くさせていた。
「じゃあ、俺は柚ちんを守るよ~。そんじゃあね~、柚ちんの話聞けて良かったよ~。」