第4章 唯一の国
「涼太って、呼んで欲しいス…。」
黄瀬は、柚姫の耳元で囁くように言う。その時、ピクッ…と動く柚姫たったが、やがて黄瀬の腕の中でクスクスと笑う。
「分かったよ、涼太。」
「ありがとうス!俺、嬉しいっスよ。」
そして、黄瀬は柚姫からゆっくりと離れる。その時の黄瀬は照れくさそうな表情を浮かべていた。
「涼太、リビングに行こう。皆が待ってるよ。」
「はいっス。」
柚姫は、黄瀬をリビングに案内するように先頭に立ち歩き始める。その後ろから黄瀬は柚姫の後を追いかけるように歩き出す。
その時、黄瀬の瞳は真剣な物を表していた。
「柚姫っちを、守りたいんスよ。強くなって、必ず柚姫っちを守る。」
呟くように黄瀬は、そんな事を言っていたがその言葉は、柚姫の耳には入らない。いや、聞こえないようにしたのだ。
リビングに着くなり、そこは長いテーブルが幾つも設置されている。けど、まだ余裕があるほどの広さだ。
「おぉ、戻ったか。大丈夫か…と問いたい所だが…実際そうではないみたいだな。」
足を組み柚姫の様子を心配そうに見る光瑠。ペコ…と頭を一度下げる柚姫。すると、女の使用人…優花は、黄瀬に近付く。
「黄瀬様のお席は、此方です。」
「へ?あ…あぁ、ありがとうス…。」
黄瀬は、やはり黄瀬様と呼ばれ一瞬戸惑いを見せたが、すぐに頷いて優花の案内に付いて行く。席は、笠松の横に座る。
柚姫の顔色を見ると、やはり顔色が悪かった。それでも柚姫は、気にせず自分の席に座る。