第4章 唯一の国
柚姫は、近くにあった小さな引き出しから包帯を取り出し、自分の右腕を巻こうとした時、黄瀬が動いた。
「俺にやらせて欲しいっス!少しでも、役に立ちたいんスよ…。」
「…分かったよ…。お願いしますね。」
柚姫は、包帯を黄瀬に渡すと黄瀬は満面の笑みを浮かべ包帯を受け取り、柚姫の右腕を巻き始める。黄瀬は器用に、それに綺麗に柚姫の右腕を巻く。
「綺麗に巻けるね…。」
「そんな事ないっスよ。はい、できたっス!!」
柚姫は、綺麗に巻かれた包帯を見るとクスと笑い、黄瀬にありがとう…とお礼の言葉を掛ける。そして、柚姫はスッ…と立ち上がり先程着ていた黒いコートから、ゴリラの突然変異から取れた石を、内ポケットから取り出す。
「それ…あの石っスか?」
「そうだよ、あの突然変異から取れた石…。ちょっと…報告したくてね…。」
柚姫は、石を凝視しながら黄瀬の質問に答える。その石を違うポケットにしまい、黒いコートは籠の中に入れる。
「そういえば、自己紹介まだだったよね?神禮柚姫です。多分、同い年だから敬語いらないからね。」
「黄瀬涼太っス!宜しく!!柚姫っち!」
「ん?…っち?」
「あ、俺…尊敬した人は何々っち…って付けるんスよ。」
黄瀬からの呼ばれ方に、柚姫は一瞬だけ目を丸くさせていたが、黄瀬の説明を聞いてクスと笑い出す。やがて、黄瀬は立ち上がり柚姫に近付いて、ギュッと抱き締める。
この行動に、柚姫はとても驚き目を丸くさせる。
「あ、あの黄瀬??」