第4章 唯一の国
光瑠は、目を細め更に鋭くさせ杲良を捉える。杲良は、チッ…と舌打ちをして剣を鞘に入れる。だが、答えようとはしない。
光瑠は、チラッと柚姫の右腕の傷を見る。どうやら、元から分かっているみたい。柚姫の血は、流れ床に落ちてその場が赤く染まる。それでも、平然と立つ。
ギリ…と歯を食いしばる杲良。やがては、声を張り上げる。
「何故、僕の思い通りにならないッ!何故ッ!!!?此処の城主──」
「城主は、お兄様です。神禮一族の頭首も、お兄様です。叔父様ではありません。」
杲良の言葉を塞ぐように、柚姫はそんな事を言って、瞳は杲良を捉える。杲良は、苛立ちで顔を歪める。そして、その場を逃げるように何処かへと歩き出した。
「とりあえず、色々合ったみたいだな。無事で何より…と言いたいとこだが……。そうでもなさそうだ。治療を受けろ。お前の客人は、俺が何とかする。」
光瑠の言葉に、頬を緩ませ微笑みを浮かべる柚姫。賢次は、刀を鞘にしまう。光瑠や賢次は、動きやすい格好をしていた。
すぐ何かあってもいいように、なるべく軽めの服装を着用している。
「分かりました。自分の部屋に行って治療してきます。皆さんは、お兄様に付いて行って下さい。」
柚姫は、黒子達に向かって微笑みながらそんな事を言って背を向けた瞬間…。
「その治療…俺にも手伝わせて欲しいっス!」
黄瀬は、柚姫に向かってお願いをする。足を止め黄瀬を見る柚姫。