第12章 約束
「安全な場所へと移動します。早くッ!」
柚姫は、黒子達に呼び掛け呪文陣へと入れさせるが、呪文陣の手前で足を止める赤司。
「征ちゃん、何してるの?」
既に呪文陣の中に入っている実渕が、赤司に声を掛ける。赤司は、柚姫の方を向く。
「他の場所に移動するのは、本当にか?何故、俺達だけ別行動したか理由は分かった。」
「赤ち~ん、何言ってるの~?」
紫原も既に陣の中にいる。赤司の一言に、一瞬だけ柚姫の表情が歪んだが、すぐに表情を戻す。そして…。
「Svanire.」
風の力で無理矢理、赤司を呪文陣の中へと吹き飛ばす。そして、柚姫の表情は今でも泣きそうな顔の笑顔を浮かべていた。
「征十朗の言った通りだよ。この呪文陣は貴方達が帰る方法の唯一の術だよ。禁断の術だから、時間がかかちゃった。」
「嘘…だよね?柚姫!」
さつきは、泣きそうな表情で柚姫に問い掛ける。しかし、柚姫は首を左右に振る。嘘ではない本当だ。
「おい、いい加減にしやがれ!こんなヤバい状況で、俺達を帰す気かよ!!」
青峰は、呪文陣から出ようとするがキーン!と青峰を跳ね返す。一体何があったんだと本人は、茫然となる。
「今のは、姫様の結界だ。それにただの結界ではない。神禮一族が誇る結界術。神禮一族ではない限り、二度と打ち破る事は、不可能。」
洸汰が黒子達に説明をした。やがて、柚姫の足下に他の呪文陣が現れ始めた。そう、術の開始だ。
いくら、黒子達が呪文陣の中で足掻こうとしても結界は破れない。破る事すら出来ない。