第11章 狂気
光瑠の言葉も衝撃的なものだった。杲良は理彩だけでなく兄である剛也も殺していた、という真実を知った。
柚姫は、震える手で口を塞ぐ。ショックが大き過ぎて、柚姫の頬に流れる涙。やがて、その場に座り込んでしまった。
「っ……うぅ……な、んで……よ……。」
「…っ、姫様……。」
洸汰は、柚姫の隣に座り込み自分の方に抱き寄せ鞘から刀を抜き取り、杲良に向ける。杲良は、冷たい瞳へと変えて、洸汰を睨み付ける。
「僕の婚約者に触るな。」
「姫様は、杲良様の婚約者ではない。ましてや、人殺しが何を言うか…。姫様と光瑠様の大切な人を奪って…。」
洸汰は、ギュッと刀を握り締めて僅かに声が震えていた。黒子達も、信じられない…という表情を浮かべていた。やがて、ダンッ!と強くテーブルを叩く光瑠。
「…出て行けよ。我慢の限界だ。神禮一族は、命を守る使命があるのにも関わらず、逆に奪う。前代未聞だ!出て行けよッ!!」
珍しく光瑠の荒々しい声が、リビング中に響く。雷の音がある意味光瑠の怒りを表しているようにも聞こえる。
賢次が動き、杲良の両腕を掴み背中へと回す。
「光瑠様の命令です。貴方様は、此処から出て行ってもらいましょう…。」
そのまま、賢次は杲良を連れてリビングを出て行こうとした時、杲良は今まで以上の不気味な笑みを浮かばせて言った。
「僕を追い出したこと、いずれ後悔するからな…。」