第11章 狂気
柚姫は、1人で部屋に戻ってはベッドへと寝っ転がる。瞳にゆっくりと閉じて、夢を見た内容を思い出す。
母親…理彩が苦しんでいる声が頭の中から一切離れられない。その夢は、まさかに悪夢というべきなのだろう。その時、コンコン…とノック音が柚姫の耳に入ってきた。
柚姫は、瞳を閉じたまま部屋に入る許可を出す。部屋に入ってきたのは実渕だった。実渕は柚姫の様子が気になって付いて来たのだ。
実渕は、柚姫のベッドに腰掛け優しく頭を撫でる。その影響なのか、柚姫はゆっくりと瞳を開ける。
「…実渕さん?」
「結構辛そうな顔をしていたわね。私でよければ、話は聞くわよ?」
やがて、柚姫は布団をギュッと弱々しく掴み実渕に夢で見た話をする。それは、母が…理彩が苦しんでいる夢を…だ。
「…あの時の私は何も出来なかった。」
「私から上手く言えないけど、それは仕方ないと思うわ。何よりもかなり幼かったもの…。」
実渕は、柚姫の頭を優しく撫でながら問い掛ける。あの時、丁度13年前の話だからだ。記憶が曖昧なのは分かる。当時は、3歳だったからだ。
「あの時……誰かが………。」
と呟くように言う柚姫は、やがて目を見開きガバッと突然起き上がる。勿論の事、実渕はとても驚いていた。
「どうしたの?」
「あの時、あの場所に居たのは……。まさか……。」
そして、柚姫はベッドから慌てて下りて自分の部屋を出て行き、リビングへと走り始めた。勿論の事、実渕は何のことやらと分からなかったが、後を追い掛けるのだった。