第10章 恨み
「俺が、3歳の時だよ…。父さんが死んだのは…。」
洸汰の父親は、今から13年前に亡くなったらしい。だが、柚姫と光瑠とは、違ってはっきりと父親を覚えている。洸汰は、握り拳を作り歯を食いしばる。
「正直、あの時は剛也様や光瑠様…姫様を恨んでいたよ。殺そうとも考えた…。けど……。」
「……けど…?」
やがて、洸汰握り拳を作ってた手を緩め、弱々しい笑みを浮かべる。
「その日…だ。あの剛也様が、俺の家に来て母さんの前で…土下座をしてたんだ。それも、泣いて……。その姿を俺は、隅で隠れて見ていた。」
「剛也様が…土下座を!?」
あまりにもの衝撃で、賢次は驚いていた。そう、王様である剛也が土下座をするほど謝っていたのだ。死なせたのは、自分の責任だ…という事を伝えて。
「母さんは、泣いても剛也様を許していた。その瞬間からだ…。俺は、剛也様や他の皆様を恨めなくなったのは…。だが、その数日後だ…。剛也様や理彩様が亡くなったのは…。」
「そうですね、剛也様が亡くなって次の日に、理彩様が亡くなったのは…。光瑠様、姫様が悲しみにくれていました。」
「その姿も俺は見た。姫様が泣いている姿を…。だから、俺はあの人を守りたい!父さんの意志を継いでッ!」
洸汰は、真剣な瞳へと変えて賢次を見る。その姿を見た賢次は、ふっ…と僅かに笑みを零す。なるほどな…と呟くように言う。
洸汰の想いは本物だ。それは、柚姫と光瑠は分かっていた。だから、柚姫の護衛役となったのだ。