第10章 恨み
光瑠は、無言でその様子を見ていた。賢次がリビングを出て行った事を確認した、光瑠は、さて…と呟くように言ってから、真剣な瞳へと変える。
「洸汰の父親は、俺の父様からもかなりの信頼を得ていた。聞いた話では、洸汰の父親は、俺の父様を庇って死んだみたいだ。」
洸汰の父親は、剛也を庇い死んだと話す光瑠。その瞳には、悲しみが宿っていた。だから…と弱々しく言葉を繋げる光瑠。
「…俺や柚姫が恨まれたっておかしくはない。殺されてもおかしくもない。だが、アイツはしない。する様子を全くみせない。」
「俺達から見れば、彼はかなり忠実だと思われるが…?」
赤司がそんな風に言うと、先程悲しい瞳をしていた物が、変わった。どこか、嬉しそうな表情へと変わる。
「何故、あぁなったか私達には分からない…けど、洸汰は立派な人になった。私にとっては、大切な相棒です。」
柚姫は、黒子達に最高の笑みを浮かべる。柚姫の笑みは、どこか可愛らしくそして何よりも綺麗だった。
一方で、賢次は洸汰の部屋の扉をノックし入る。其処には、窓から見える空を見上げる洸汰の姿があった。
「洸汰…。光瑠様と姫様が心配していましたよ?」
賢次は、洸汰に声を掛けると、知ってる…とすぐ消えるような声を出す。その様子から賢次は、一度息を吐き出し静かに言った。
「教えて下さい。一度恨んだ、お前が恨まなくなった理由を…。」
洸汰は、空を見ながら少しずつ話始める。