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喪に服す獣

第1章 忘却は幸福ですか、


 青い海の上に浮かぶ小舟。その上でドギーが、花に囲まれていたそうだ。それはまるで、死人を送る儀式のよう―――。
「だから目が覚ますと、ドギーがいなくなるんじゃないかって、怖くなったんだよい」
 そう不安気に語るマルコは、やはり家族の死を全て、受け入れられていないように見えた。
 思わずドギーは、マルコを抱き締める。子をあやすように、背を叩いてやる。
「大丈夫。俺はちゃんと、ここにいる」
「本当かい?」
「当たり前だろ!俺が嘘吐いたこと、あったか?」
 ニカッと白い歯を見せながら言うドギーに、マルコは首を振った。
 情報屋を生業としているので、ドギーは不定期に航海を行う。それでもマルコと会う約束をしていれば、どれだけ離れていようが必ず、ドギーはマルコの元へとやって来た。今までも、そしてこれからも。
「わかったならもうちょっと寝な。まだ顔色悪いぞ。で、起きたら飯食いに行こう。レイさんオススメの、うまい飯屋があるんだ」
「あぁ。約束だよい」
 笑んで、マルコはドギーの胸に再度、顔を埋める。落ち着く心音と匂いがして、睡魔はあっという間にやって来た。
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