第12章 夢見ガール シーザー
「…ッ?!」
バッと体を起こす。
「…夢…?」
…夢を見ていたようだ。シーザーが生きていたという、そんな夢。
なんて夢を見ているんだろう、私はもう独りだというのに何を求めているのだろう。シーザーといういない人を求めて、何故私は涙を流しているんだろう。
「もう、やだ…ッ」
シーザーの遺品なんて貰っていない、指輪なんてなかった。言葉もない、骨さえない。写真だって、出る間際に撮った一枚しかない。
涙でぬれてしまった枕をかたずけた。
もうどれぐらい経ったんだろう、シーザーが死んだということを聞いてから5年近くは経過しているだろう。
ジョセフやスージーQが何処へ行ったかもしらない、連絡を取っていない。リサリサさんは住所こそ知っているものの最後に会ったのはシーザーの死を告げられたあの時。それからは怖くて顔を合わせられないし、声も聞きたくない程怯えていた。
私は絵描きをしている。出会ったあの噴水広場のベンチに座って絵を描いて、それを売っている。自分で言うのもなんだけれど、結構売れている。最近では似顔絵を頼まれることも多くなり、大体誰かを描いている。
だから今日も、あの噴水広場へと足を運ぶ。
「亜理紗さん!今日は俺の顔を描いてくれよ」
「次は俺だからな!」
「わかりました」
声をかけてくるのは殆ど男性。鈍感ではないからわかる、多分この人たちは私の絵を買いに来ているというより私の顔を見に来ているんだと。だから私は拒まない、こういう人達と話していると気が楽になるし、一瞬でもシーザーを忘れることができる。
忘れちゃあいけないけれど、忘れてしまいたい。忘れられない。
「お代は出来次第で構いませんから」
そう言っていつものように絵を描き始める。
誰の為でもない、私が生きるためだけに。