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闇の底から

第6章 葛藤


「アナと雪の女王で、生まれてはじめて」
氷の女王エルサと天真爛漫なアナ。
観客へのリクエストでどちらがアナかエルサかを決めてもらうことを瑞季先輩が持ちかけてきたので一も二もなく乗った。年の順というほど離れていないし、アナの方がどう考えても歌う量が多い。エルサが入ってくるのは後半だし、ハモっていてもアナの方がどうしても前に出てくる。瑞季先輩がアナをやりたがっているのはよくわかった。

「ここで皆さんに相談がありまーす」
渉先輩にマイクを奪われた。
「実は2人はアナでもエルサでも歌えます。どっちにどっちをやってもらいたいか決めてくださーい、20秒で」
ウインクを極めてドヤ顔で私を見てくる。
「お前どう考えてもアナだろ。」
数日前のメールを思い出す。瑞季先輩の無茶振りに弥生先輩もワガママ娘と評していた。私がボーカルを乗っ取ったに等しいらしいが、バンドメンバーは優しいからはっきり言ってくれる。凜なしでのFROZENFRUITは考えられないと言ってもらった時は思わず涙腺が緩んだ。
「はーい、じゃあ、アナをやって欲しい方に手をあげてくださーい」
「瑞季にやって欲しい人、はーい挙手」
「みずきぃぃ」「みるきぃー」二回生集団から手が上がる。仕込まれてたな、これは。
「はい次、凜にやって欲しい人、はーい挙手」
「凜がやらんでどうする。誰にやらせるつもりなんだ」
という王様発言が聞こえて見てみると…栗色ボクっ娘がいる。定期会近畿メンバーが勢ぞろいしていた。
その声に触発されてそうだそうだと野次が上がる。
「じゃあエルサを真島瑞季が。アナを相楽凜が演じます。」
ぽん、と二人の頭を撫でて渉はベースの位置に…ではなくベースを置いてヴァイオリンを手に取った。弥生も同じくドラムセットの中から出てきてピアノの前に座る。

副腎髄質からアドレナリンが出て溢れて止まらない。交感神経が活発に働いて鼓動が早い。手も汗ばむ。
でもそれ以上に期待の眼の光に支えられる。
衣装は最初と同じ白ジャケットに黒のレザーフレアスカート。グリーンのドレスではないけど私からアナを伝えるには……

その場でターンしたりピアノに寄りかかってみたり。劇中でとんでもなく飛び回っているアナに凜が被る。
エルサが登場してからは2人の差がわかるような芸も入っていた。
大盛況の中、FROZEN FRUITは去っていった。
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