第1章 親子
泣きそうな目で、はマルコを見る。反射的に目を逸らされて、更に泣きそうになった。
「わ、私は、」
小さく息を飲みながら、は声を振り絞った。出来るだけ白ひげの顔を見ないよう、心掛ける。
「私は……。この船を、降ります」
「……そうか。そりゃあ、残念だ」
「え、」
とマルコの目が、見開く。
突然のことでどう返していいのかわからず、の動きは止まった。
「お、親父!」
ほんの少しの沈黙を破ったのは、マルコだ。扉の隣で立っていた彼は、焦ったように白ひげの隣まで来る。そして、ほんの少しだけトーンを下げて呟いた。
「俺はの意見に賛成だよい。連れて来たのは俺だが、ここにいちゃぁはもっと酷いて目に合うかもしれねェよい」
「なら俺達が守ってやりゃァ、いいだけの話だろうが」
「守る……?天竜人だった私を?」
「テメェが元々どんな人間かなんて、どうでもいいのさ。この船に乗った以上、は俺の娘だ。親が子を守ってやらなくて、どうする。なぁ、マルコ?」
グラグラ笑いながら言う白ひげに、は思わず涙が溢れた。まさかこんなにも暖かい言葉を、かけてもらえるとは思ってもいなかったのだ。
指での涙をすくって、白ひげはを見た。そして、もう一度問いかける。「よ、テメェはどうしたい?」と。
「私は……ここにいたい、です。親父さんやマルコ達と一緒に、旅を続けたい」
「そうか……。その言葉が聞けてよかった」
大きな掌で頭を撫でられて、は思わず目を閉じる。心がなんだかポカポカして、とても幸せな気持ちになった。