第3章 ゆびきり
翌日。
彼女と和解をしたことで、僕の肩の荷は一つ降りた。
その為か、少しだけ目覚めがいい。
「半兵衛さま、入ってよろしいですか?」
襖越しから彼女の声。
彼女の願い通り、何もなかったように振舞おう。
かといって、変に意識もせずに。
何よりも、一日ぶりの彼女なのだ。
その喜びを素直に表現すればいい。
「ああ、入ってくれ。」
自分の声が、驚くほど弾んでいた。
襖がいつもより勢い良く開いた気がするのは僕の錯覚か。
微笑んだ彼女が現れる。
「おはようございます、半兵衛さま。」
「ああ、おはよう。」
二人して、まじまじと見つめあってしまう。
徐々に紅みを帯びていく彼女の頬が可愛らしくて、近寄ってその頬に触れた。
「熱でもあるのかい?」
わざとすっとぼける。
「さぁ、どうでしょう。」
彼女も、そうやってすっとぼける。
「その時は、僕が看病してあげるさ。
もちろんつきっきりでね?」
さらに紅く、熱くなる頬。
しかし彼女の顔が急に真顔になる。
「ですが半兵衛さま。
半兵衛さまこそ、早く本調子にお戻りくださいませ。」
「どういう意味だい?」
「最近、咳を頻繁にしていらっしゃる。」
………確かに。
言われてみれば、最近異常に咳が出る。
風邪の咳とは違う、乾いた咳だ。
と思った刹那、また咳が出た。
「げほっ……本当だ。」
「ほら。」