第1章 水泡
ため息をついて自室に戻る。
話し合い、とも言えない僕らの言い合いは平行線。
完全なる決裂だった。
このままではまずい。
……どうすればいい。
最悪、耐えかねた秀吉が僕の了解を得ずに軍を動かす可能性もある。
大陸にある一つの国を征服しようとするんだ、きっと日の本全土から軍を動員するだろう。
それで負けたら、どうするつもりなんだ?
やっぱり、朝鮮侵略なんてダメだ。
秀吉が諦めるまで粘るしかないだろう。
それはあまりにも長く困難な道のりに思われて、気分がさらに憂鬱になる。
ついこの間まで、日の本統一を果たして浮かれてたような気がする。
まさかこんなことになるとは思っていなかった。
指を折って数えてみる。
愕然とした。
「僕らが日の本を統一したのは、たった10日前じゃないか…。」
たった10日で、これか。
彼女を抱いたあの夜が、幻の様だ。
あの彼女の笑顔も、優しさも全て幻で、狂った彼女だけが現実かのようにも思えてくる。
背中の痛みが、そんな思いをさらに強くさせた。