第2章 分かり易くて、素敵な君。
きっと君は、放課後にでもあの娘に告白されるんでしょうね。
でも今、君が投げた一言で周囲の視線は僕に向けられてますよ。
ほら、もう。
ざわざわと彼に気付かれないように僕の机の周りに群がるクラスメイト達。
「え、なに? 黒子なんか知ってんの?」
「なにも知りません」
「じゃあじゃあ、あいつが桃井さんのこと好きなのは?」
知ってますよ。
なんて、君らに言える訳が無い。
「え、そうだったんですか? なんか、凄い秘密を聞いてしまった気がします……」
「んな気に病むなって! あいつ見てたら誰でも分かることなんだからよ!」
ひとりの男子生徒がぱしん、と僕の肩を叩くと、それを合図のようにちらほらと広がっていく人混み。
ほっ、と胸をなでおろしていると何も知らない彼がきょとんとした顔でひょこひょことこちらに歩いてきた。
「ん? どした?」
なにも知らないんだ。
僕の苦労とフォローさえも。
なんだか腹が立って彼にちょいちょいと手招きをする。
頭に疑問符を浮かべながらも、なんの迷いもなくこちらに向かってくる彼に、僕は一言投げた。
「君は本当に。馬鹿ですか、って言いたいくらいに分かり易いんですよ」