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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第6章 走り出せ!


「待てって!」

声を後ろに闇雲に走り出す。

窓の風景から一階で間違いない。

さっきの衝撃で吐き気は吹っ飛んだが、今度はだるさが体を襲った。厄介な風邪をひいたみたいだった。

そうこうする内に玄関が見えてきた。思わず涙が浮かぶ。

普通のドアが、楽園への入り口に見えた。神様ありがとうございます!





「ハロー! アーサー来てやったぞ!」

「!?」

突如空気を読まずドアが開き、颯爽と青年が現れる。

――前言撤回、神は死んだ!!

「アル、そいつを捕まえろ!」

はいぃーッ!?

「ひゃっ!」

条件反射のように、アルは私の手首を掴む。

ふわりと優しい手つき、しかし振り切れそうにない強さ。

アルは不思議そうに目をぱちくりさせた。

眼鏡の奥で、青い瞳が私を映して無邪気に輝いている。

なんという実物、三次元の破壊力……ってんなこと言ってる場合じゃない! 味音痴二人しかいない空間にいられる筈があろうか!? いやないっ!! 断じてないっ!!

頭が高速で回転する。打開策を見つけようと、処理速度が上がっていく。――あぁもうこれしかない!

「あっUFO!」

「え!?」

あらぬ方角を指さす。アルのパッと輝いた顔がそちらを向き、力が緩む。

すとんとその手から抜けるように、重力を借りて腰を落とす。

手首が――抜けた。

途端私は脱兎も風もひれ伏すような速さで走りだす。力が全てと思うなよ若造! 柔よくば剛を制す!!

「アルてんめぇえ!!」

振り返らず、湯のみのことも考えず、ただただ必死に走った。
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