第46章 “計画された犠牲”
「セーフハウスは靄が入ってこられないんじゃなかったの!?」
『あれは室内で発生していました』
「室内!?」
『……僕、わかりました。あれはおそらく“排熱”の一種です』
エドの問いに答えるライヴィスは、いやに冷静で、少し怒っていた。
無茶ばかりするエドとトーリスに怒ってるのだろう。
「まだパスワードがわからないんだぜ!?」
息も絶え絶えに走りながら、ヨンスが叫ぶ。
とうとう電波塔のすぐそばまでついてしまった。
そこらじゅうで無数の黒い靄がうごめいている。
こんなにいては、螺旋階段を駆け上がり、中央コンピューターにたどり着く前に、黒い靄に襲われてしまう――
『僕が時間を稼ぎます』
そう言ったライヴィスの声には、温度がなかった。
なにをするつもり、と聞こうとして、見えない大きな手で体が吹き飛ばされそうになる。
突風だ。
それも、特大の。
「わわっ!?」
「なんなんだぜ!?」
『僕だけ蚊帳の外なんて嫌です』
びゅううといううるさい風切り音の中でも、ライヴィスの声はかき消されていなかった。
かわりに、黒い靄が風によって、電波塔から遠ざけられるように吹き飛ばされていった。
『――ッ、3分、もち、ません……っ! パスワードを見つけて、入力してください!!』