第36章 --.信号:符号間干渉
画面に目が釘づけになる。
『ニュースナインです』
アナウンスが、耳の奥でリフレインする。
思い出す。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
アナウンスを聞いてから、トリップしたことを。
「――っ!?」
同じ日の内に戻って、同じ時刻のアナウンスを2度聞くことはありえない。
21時のアナウンスは、1日1回だからだ。
21時のアナウンスを聞いた後トリップしたのだから、戻ってから聞きうるのは、21時以降の22時や23時のアナウンスだ。
もし、ありえるパターンを考えるとすれば――
アナウンスを聞いた21時後にトリップし、21時前に戻ってきて、2度目のアナウンスを聞く。
このパターンだけ。
、、、、、、、、、
つまり、過去へ戻らなければ、2度21時のアナウンスを聞くことはありえない。
「過去に……戻ってきた……?」
自分で言った言葉に、現実味がない。
表示が21:01に変わる。
テレビの音が、やけに遠くから聞こえた。
『公子に危険が及ぶ可能性がある、ってことだ』
いつかの図書館で、雨の音とともに聞いた言葉が脳裏に甦る。
進み続ける時計の秒針を、私はただ見ていることしかできなかった。