第34章 昏睡による覚醒より
「あーっはっはっは!」
突如、病室に高らかな笑い声が響いた。
その主を除いた全員が、ギョっとして彼を見る。
彼は、ロヴィーノは、おかしくてたまらないとでもいうような表情で、目のふちの涙を指で拭った。
「はー、やっぱお前、規格外だよ。こんなぼんやりしたフツーの女一人が、異変と同格だって?」
「ぼ、ぼんやりって!」
まるで「こいつが宇宙大魔王(渾身のギャグ)だって?」というような言い草だ。
ひーひーと、なおも笑いをこらえきれていないロヴィーノ。
完全にツボに入っている。
喋るなと言われたのに、思わずつっこんでしまった。
「た、確かに……いや医師はそれ以上とも」
ハッとしたように、菊が医師の言葉を重ねる。
「世界を滅ぼしうる力、イコール公子ちゃん、ってことだよね……ちょっと元ヤン眉毛をプチッとやってもらえないかな~!」
「あ、ええなそれ!」
フランシスとアントーニョが謎の団結力を見せる。
フェリちゃんはロヴィの傍らでくすっと笑っていた。
――あっという間だった。
一番の被害者だというのに。
ロヴィーノは、一瞬で空気を変えてしまった。
ツボに入った笑いは、ようやくコントロールできるレベルになったらしい。
笑顔が、ゆっくりとそのすがたを変容させていく。
「――他にいるか? こんな異変と張り合うようなやつが?」
嘆く気も、恐れる気も、さらさらないとでもいうように。
いつものような、煽るように強気な声が、小気味良く病室に響く。
迷いのない瞳は、強い光を閃かせていた。
彼の問いに、皆が沈黙する。
けれどその沈黙は、さっきとは全く異質のものだ。
真逆の――希望に属する沈黙。
ロヴィーノはそれを満足げに見ると、挑戦的な瞳の輝きを一層燃え上がらせて、その目を薄く細め、
「そんなやつ、この世界のどこにだっていやしねぇよ」
不敵な笑みに、口元を歪めた。
それはまるで、誰かへの宣戦布告のようだった。