• テキストサイズ

【ヘタリア】周波数0325【APH】

第4章 夢かうつつか?


しばらく沈黙が続いたあと、

「「あの!」」

私たちは同時に声を発した。

途端互いに譲り合う。あぁ、なんというデジャヴ……。

仕方なく、私から話しだすことにした。

うまく言葉が出なかったので、単刀直入に言う。

「私はこの世界の〝外側〟から来たのかもしれません」



菊は、表情を変えなかった。

私の言葉の奇々怪々さに、眉ひとつ動かさない。

「桃太郎でいうところの読者側――つまり、三次元から二次元に来てしまったと?」

「はい」

冷静に問われて肯定したものの、ある疑問がくすぶっていた。

「ということは、私たちのいるこの世界も、公子さんにとっては物語の中の世界、ですか?」

続けて淡々と尋ねられた。

その瞳は、月のない夜のように光がない。

私は口ごもる。

しかし、意を決して言った。

「それは――菊さんの説明を聞けば、その答えが得られそうなんです」

「私の説明、つまり“この世界で起きていること”、ですか?」

頷いて、不思議そうな菊を真っ直ぐに見つめる。

ラジオのノイズに紛れ、私に呼びかけた声。

その主が誰なのか。

それをどうしても、知らなければならない気がした。

「――わかりました。バトンタッチですね」

菊の手から離れ、テーブルに置かれた湯のみがコトリと音を立てた。
/ 378ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp