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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第34章 昏睡による覚醒より


おずおずとした、どこか思い詰めた声だった。

明るかった雰囲気に、音もなく影が忍び寄る。

医師だろうか。

カルテを片手に、硬い表情をしていた。

「ここ病院やし、誰も持ってないと思うで?」

不穏な空気にいち早く反応したのはアントーニョだ。

怪訝そうな顔には、不安の影がさしている。

説明を急かされ、医師は口火を切った。

「30分前に、脳波計にノイズのようなものが発生したんです」

「ノイズ?」

アントーニョが聞き返す。

「はい。極めて不可解なことですが、それが彼の脳波に影響し、覚醒させられたというか……」

医師の言葉は、後半ひとりごとのようになっていた。
  、、、、、
覚醒させられた?

その言い方って――

「ちょ、ちょっと待って! どういうこと? 覚醒させられたって、その言い方――」

声を上げたのはフェリちゃんだ。

私と同じ考えを持ったのか。

覚醒させられた、つまり、

“ロヴィーノは正常に回復したのではない”

ということを。

フェリちゃんにすぐは答えず、医師は困惑した目で続ける。

「ご説明した通り、彼の昏睡は、脳機能が破壊されたとか、薬物だとか、そういったものが原因ではありません。
神経細胞の働きが、ほとんど停止していると言っていいほど、極めて遅い。
脳が、いわゆる“コールドスリープ”にあると言いますか……コールドスリープたらしめる脳波が検出されています」

神経の電気信号で私たちは思考し、行動することができるという。

愛は電気信号でしかない、などという文句があったっけ。

そんな、場違いな考えが浮かんだ。

脳を冷凍睡眠状態にさせるような“なにか”が、ロヴィーノに働いている。

“なにか”――それは、ゴーストタウンでロヴィーノにそっくりの“彼”がもたらしたものに違いなかった。

その“なにか”を、彼は撃ったのだ。
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