第34章 昏睡による覚醒より
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「ロヴィーノッ!!」
扉を乱暴に開け放ち、病室に飛びこむ。
息荒いまま、室内を目に映す。
そこには、ベッドに横たわり力なく目を閉じたロヴィーノが――
「……あ、あら?」
「病院なんだから静かにしろコノヤロー」
――いなかった。
全然いなかった。目は三角に、私と菊へ非難がましく注がれていた。
「も、申し訳ありません……あ、こちらお見舞いのトマトゼリーです」
「あぁ本田――ってお前もトマトかよ! りんごゼリーとかでいいだろ! トマトはもういいよ!」
「も、申し訳ありません……」
平謝りする菊。
確かに、テーブルや棚には、トマト、ドライトマト、トマトジュース、トマトのお菓子、トマトケチャップ(誰だよバカか)、花瓶にはプチトマトの実った茎(ここまでくると意味がわからない)――
などなど、そうそうたるトマト製品が並んでいた。
各国の「とりあえずトマト関係なら大丈夫っしょ」というお見舞い品チョイス事情がうかがえる。
これだけトマト責めにあったら、もうトマトが見たくなくなるかもしれない。
今度はりんごゼリーとかぶどうゼリーにしよう。
…………いや、ちがうだろ。私はなにしに来たんだ。奴らの見舞品チョイスにツッコミに来たわけじゃない。
「だ、だって……昏睡状態って――」