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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第34章 昏睡による覚醒より


それから更に、3日が経った。

再帰点近くの集合場所から移動し、今は菊の家に厄介になっている。

話し合いを続けてきたが、“戻る”前兆すらない。

それは、私が欠損を埋める情報や、鍵を提示できていないことを意味する――

ギルの仮説を借りれば。

ロヴィーノを連れ戻すだけじゃ、ダメなのか?

「……難しい顔をされてますね」

テーブルを拭いていた菊が、微苦笑しながら言った。

なにを考えているのか、見透かされていたようだ。

「あっすみません!」

広げていた資料を急いでどける。

いいんですよ、と返す菊に対し、一層申し訳なさがつのった。

せめてなにか役に立てないかと、にらめっこしている資料だが。

さっぱりわからない。

専門用語も多く、意味が不明。泣きそう。

一体私はなんのためにここにいるのだ……これじゃあタダ飯食らいの居候じゃないか……

「……公子さん」

「すみません分不相応な挑戦でしたさっぱりわかりませんすみません」

「実は、お話ししておかなければならかったことが……あります」

「……?」

菊の表情が、仄暗く陰る。

深刻さを帯びた瞳が、迷うように揺れていた。

まさか、私のせいでガス代電気代上がったとか!? それかご飯食いすぎとか!?

などとボケてる場合ではなさそうだ。

「耀さんや湾さんから既にお聞きかもしれませんが――」

そのとき、電話が鳴り響いた。

一言謝ってから、菊は受話器をとる。

相手はフランシスらしい。

二言三言の内に、菊の顔がサッと曇った。

しばし言葉を失ったのち、

「……わかりました、すぐ向かいます」

それだけを言い、通話を終える。

受話器を置くと、私に向き直った。

一体なにを話していたんだ?

明らかにただ事ではなさそうだ。

しかも、それが良くないことであるのを、菊の瞳が物語っていた。

「ロヴィーノくんの病院に向かいます」

「な、なにかあったんですか?」

嫌な予感が、する。

「彼は――昏睡状態です」
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