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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第34章 昏睡による覚醒より


勝手に動かされるのは、生物以外の、“物”だけ。

人間――つまり“生物”は移動作用の対象外で、勝手に動かされない。

つまり、東京から急にアマゾン川流域に動かされるような、“失踪”じみたものはない。

動物も同じ。

急に、砂漠にホッキョクグマが現れるようなことは、ない。

ただし、砂漠に浮き輪が現れるようなことは、ある。浮き輪は“物”だからだ。

「消失点の付近には、動物が近寄らないんです。なにかを感知しているみたいに」

わざわざ好き好んで消失点に踏み込んで、移動しちゃうような物好き生物は、人間だけってこと?

「“物”と、任意の人間だけに移動作用が働く、ということですか?」

「そうなります。現在、消失点および再帰点が確認されているエリアは政府管理下にあり、立ち入り禁止になっています。ほとんどの国で同じようなルールが設けられました」

そりゃそうだ。

「放射能だとか、頭がやられる電磁波が出てるとか――」

そんな声とともに部屋に入ってきたのは、いかめしい碧眼。

その手のトレーには――ホットサンドのような軽食と、真っ白なクリームと苺がのった、クーヘン!

そういや、時計は3時近くを指している。おやつの時間か! 手作りか!!

「そのような話が出回り、マトモな人間は近寄らなくなってるんだ」

「わー! すっごくおいしそうです!」

「……今の話、聞いていたか?」

呆れたようにルートが嘆息する。

しかし、その口元には小さく笑みが浮かんでいた。

きっと隣の菊も、同じように目を輝かせているのだろう。

私たちはおやつにありつくことにした。

菊の話はまだまだ続いたが、把握しきれないため、携帯のメモに書き残しておくこととする。
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