第33章 閉じ始める序説まで
じゃれあいが急に静かになる。
「……おい、馬鹿弟」
かと思うと、ロヴィが渋すぎる緑茶を飲んだみたいに、顔を苦く歪めた。
その肩には、こてっと乗った、フェリちゃんの寝顔。
安心しきったように、無防備に眠りこけている。
小さく微笑んでいるようにも見える口元からは、すやすやという穏やかな寝息がもれていた。
「あはは、ほっとしちゃったんですね」
「ち、ちくしょー」
起こさないのね、二人ともso cute。
にこにこと二人を眺めていると、
「……――嘘なんだ」
ふと、ロヴィーノが口をひらいた。
思い詰めた、曇った表情をしている。
「本当は覚えてるのに、記憶が曖昧だとか、嘘ついた」
「え?」
「全部じゃない、記憶はほとんど曖昧だ……けど、その中でも覚えてることがある――なのに言わなかった――嘘をついた……お前に言っておかなきゃいけないのかもしれない」
「お、落ち着いてください」
声音は低く、かすれていた。
顔を覆うように頭に手をやり、ぶつぶつと呟く姿は異様だ。
ギルがやれば中二病なポーズも、ロヴィがやっているととてもじゃないが笑えない。
忌まわしい記憶を思い浮かべているのか。