第33章 閉じ始める序説まで
幾重にも折り重なった悪夢から、やっと覚めたような。
磨いたばかりのエメラルドを思わせる瞳は、そんな表情を浮かべていた。
口は半開きで、一切の言葉を失っている。
ロヴィーノがなにかを言おうとして、う゛、と言い淀んだ。
次の瞬間、
「ぶはっ」
強い衝撃、それと熱。
柔らかい髪の毛が頬をくすぐり、アントーニョに飛びかかられたことに気づいた。
端から私、フェリちゃん、ロヴィーノ、アーサー、この4人に、アントーニョはまとめて抱きついたのだ。
とはいっても、アーサーは横向きだったため、首に関節技をキメられているように見えなくもない。
(フランシスは、アーサーがよろけた拍子にぶつかられそうだったが、スッと華麗に避けていた)
「……ア……アントーニョ」
ロヴィーノが呼んだ肩は、小刻みに震えていた。
何を言うこともなく、ただそうしていた。
ロヴィーノがまたもや困ったように眉を下げる。
親分の稀に見る狼狽加減と、言うべき言葉に迷っているらしい。
「し……心配、かけて、わわ悪かっ――」
「よかったあああああぁぁぁぁああああああ!!」