第33章 閉じ始める序説まで
「あっ……公子ちゃんダメだって、そ、そんなとこ蹴っちゃ――」
「その足アーサーさんのですよ」
「なにーっ!? やだっ汚い! 離れなさいよぬか喜びさせて!!」
「変態クソ髭そろそろマジで死ね!!」
――とまぁこれが、帰還後になされた最初の会話である。
もうちょっと感動的……いやマシにはならなかったのだろうか……。
ゴーストタウンの街路樹、そのテレポート地点の行き先。
つまり、こちらでの“再帰点”にフランシスがいて。
テレポートしてきた私たちに巻き込まれ、私たちの下敷きとなった。
そのために、あんなひどい再会となったわけだ。
私はあたりを見渡す。
打ち寄せる波音、飛び交う鳥たち、その声、とても遠くから風がやって来る。
空と海の境界からは、眩しい光が滲み出ていた。
すごく久しぶりに、朝焼けを見た気がしたのはなぜだろう。
そんなふうに、この再帰点は小さな港に位置している。
事前の説明にあったとおりだ。
やれやれと私たちは起き上がる。
フランシスとアーサーは、会えなかった期間交わせなかった罵詈雑言を消化するかのごとく、絶賛要修正音な喧嘩をしていた。
その騒ぎを聞きつけたのか、ある人物がやって来た。
ふらふらした足どりで歩くものだから、海に落ちないかヒヤヒヤさせられる。
目もとには漆黒のくまが刻まれ、明らかに睡眠不足なことを表していた。
「……」
彼の目が、私たちを視認して、緩慢に見ひらかれた。