第32章 回帰と代入と
彼の意図をとらえかねていると、ドゴッ、という鈍い殴打音がして、全身を締めつけていた拘束から解き放たれると同時に、
「わわわっ!?」
足が空中に舞い上がった。
と思うと、風景が高速で後ろに流れていく。
嫌な予感が……
「掴まってろコノヤロー!」
怒鳴るロヴィーノは至近距離、少し見上げる視線の先。
まさしく――お姫様だっこをされていた(通算二回目)。
「お、お重いですよ! 自分で走ります!!」
「なめんなちくしょー、お、重くな……んか……ねぇし……っ」
乱れる呼吸と、隠しきれない苦しげな表情が全てを物語っていた。
うん……いやルートがムキムキなだけで……うん……痩せよう……。
そんな結論に泣かされながら、さっきまでアーサー(偽)に捕らえられていた場所を見る。
そこには脇腹をおさえ、ふらついているアーサー(偽)の姿があった。
それを置き去りにし、私たちを追走しているのはフェリちゃん。
右手にあるのは、ルートに貸されたゴツい銃。
それでアーサー(偽)の横っ腹をどつき、一瞬の隙をついてロヴィーノが私を担ぎ上げ、先導するアーサー(こちらは本物)に従い、テレポーテーション地点めがけ走っている――
といった具合か。