第32章 回帰と代入と
「ムカつく顔でキメェことすんなあああああ!」
(それ自分のカオじゃ……)
私とロヴィーノは思った。
しかし空気を読み、言いはしなかった。
「おっかし~自分の顔じゃん!」
「うっせー!!」
普段の笑顔に残虐性を足したような、フェリちゃんの笑み。
対するは、普段のヤンキーさに、見る者の憐れを誘うような、なんとなく可哀想な、アーサーの顔。
(なんというA(あえて)K(空気)Y(読まない)……)
私とロヴィーノはそう思ったのだった。
「……ん?」
アーサー(偽)が、私の手になにかを握らせた。
頭に銃を突きつけられていることなど、一向に気にしていないように。
手のひらを見ると、小さな黒いチップが乗っていた。
microSD? SIMカード? なんだこれ?
表面をよく見てみるが、思い当たるブツとは合致しない。
疑問とともに彼の顔を見ると、
「“double edged sword”」
「……?」
アーサー(偽)は一言、そう言った。
「彼らを救いたいなら、それを使え」
続けるその瞳には、どこか迷いがあった。