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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第32章 回帰と代入と


戻る地点がわかっているアーサーに従い(もはやなにも言うまい)走り出したはいいが。

早々に呼吸が苦しくなり、まるでトリップした瞬間のような不調が体を襲った。

あのおかしなエネルギー暴走のせいだろうか。

「大丈夫か? もう少しだ」

「すみ……ません……っ」

くるんの二人も不安げに私を見ていた。

特にロヴィーノの視線には、なにかしら意味深いものを感じた。

あのフシギ怪力とともに、聞きたいことが山ほどありそうな顔をしている。

などと思っていると、突然、

「――置いていくなよ」

「!?」

全く唐突に、後ろから抱きすくめられる。

息も絶え絶えに、かろうじて走っていた私の足はたやすく止められた。

甘く囁く声は、アーサーのものだった。

首だけ振り返ると、そこには、私をじっと見つめる、光の失せた緑眼。

「ここにいろよ」

どこか妖艶に、暗い笑みに弧を描く唇。

その主は、まさしくアーサーだった。

そんな、彼は前方を走っているはず――そう思い前を向くと、あれ、アーサーが、いる……

アーサーが二人!?

「う……」

体を締めつける腕の力は強い。

あまりの至近距離にドキドキするどころか、凄まじい恐怖を感じた。

このタイミングで、いやどのタイミングでもそんなヤンデレいらねぇえ!

「あ、あ、アーサーさんっ!」

叫び終えないうちにアーサーが振り向いた。

明らかにギョッとして、急停止するやいなやこちらに駆け寄ろうとする。

しかし、その足が、またもやギョッとして止まる。

「おまえ、死にたいの?」

チャキ、という金属音。

とともに、背後からフェリちゃんの底冷えした声がした。

私を拘束するアーサーの、そのまた背後に、恐る恐る目をやる。

そこで彼は、アーサー(偽)の頭に銃を突きつけていた。

いつの間にアーサー(偽)の背後をとったの!? さっきまで前の方を走ってましたよね!?

フェリちゃんは、10人中11人が(増えてる)すくみ上がるような、100%の笑みに口を歪めた。
 、、
「コレがやっと役に立ちそう」

怖い! でもフェリちゃん一人しか見えないから、これフェリちゃん(残念ながら(偽)ではない)かよ!?
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