第32章 回帰と代入と
「あー感動の再会シーンのとこ悪いけどよ、お前ら――」
ぶち壊しな声色で、アーサーが口を開いた。
本人にも自覚があるようで、どこかバツが悪そうな様子。
兄弟仲がいいからって嫉妬してるのか? うん?
「ち、ちっげーよばかぁ!」
どうやら心の声が顔に出てしまっていたようだ。
アーサーはめげずに、肩ごしに親指を後方に向けた。
指の先には、壁に座りこみうなだれたままの、ロヴィーノ(偽)。
起きそうな気配はない。
つまり彼が言わんとしていることは――
「逃げるぞ!!」
「結局それか!」
言うが早くアーサーは駆け出し、窓枠を無駄に優雅に乗り越え、ダイナミック退室していく。
その足取りがなんだか軽快で、緊張が茶化されるというか、笑いそうになる。
隣で、くすっという笑い声が聞こえた。
フェリちゃんも、私と同じような気分になったのだろうか。
涙に潤み、普段の三倍程澄み切った瞳が、くるっと私に向く。
彼は手を差し伸べ、弾むような声で言う。
「行こっ!」
「はい!」
その手を取り、私は走り出した。