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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第32章 回帰と代入と


「……に……い、ちゃん」

フェリちゃんが、夢から覚めたように、ゆっくりと呟いた。

目は見開かれ、睫毛が小さく震えている。

覚束ない足どりで、一歩、踏み出した。

ふらふらと、二歩。

そしてそのまま前に倒れこむように、ロヴィーノに抱きついた。

「……兄ちゃん……兄ちゃん……っ!」

ロヴィーノの胸に顔をうずめ、存在を確かめるように、何度も何度も繰り返し呼ぶ。

二度と離さないとばかりに、ひしっと力強く抱きしめる。

そんな反応に、はじめロヴィーノは驚いていたが、やがて“弟に心配をかけてしまった兄”の顔になった。

「フェリシアーノ……」

そこへ、どこか困ったような、照れたような表情が浮かぶ。

傍から見てもギューッっと抱きついているため、ヘタしたら痛いかもしれない。

しかし、いつものような悪態をつくこともなく。

ちょっとためらったあと、まるで悪夢を見た子どもをあやすように、フェリちゃんの頭をぽんぽんとなでた。

瞳には、たしかな嬉しさがにじんでいた。

よかった――心の底から、そう思った。
       、、、
と同時に、もし無事に再会できていなかったら……それを考えて、全身の血が凍りつくようだった。

抱き合う二人を見ていると、

――戻ったら、そこに騒々しい一人が加わるだろうことを思うと――

ここに来るまで冒してきた危険も、これから迫るどんな危険も、なんだって構うものか、そんな思いがこみ上げた。
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