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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第32章 回帰と代入と


うしろから羽交い絞めにしてきたのは、ロヴィーノだった。

けれど目の前にもロヴィーノがいる。倒れている。右腕がおかしな方向に曲がっている。

なにが起きているのか、あるいは起きたのか、頭の中はめちゃくちゃだった。

「……は、なして」

「もういい! 十分だ! だからもう――」

やっと絞り出した声はすぐに否定される。

こわばる私の腕を拘束する手は、震えていた、

「頼むから……戻ってきてくれよ……」

睨みつけていた眼前の光景を、もう一度網膜に映す。

割れたコンクリート。散らばるガラスの破片。黒い亀裂が地面からのぼっている壁。それらに飛び散る、赤い飛沫。

そして、壁に背をもたれている“彼”。

右腕――と、あと右足が、普通ではありえない方向にぐにゃりと曲がっていた。

祈るような懇願に、広がる視界に、全身を支配していた熱がすっとひいていく感覚がした。

ロヴィーノ、と言おうとして、

「――っ!」

世界が急加速して、体が横に飛んだ。

床に衝突する前に、左腕をあげて銃を掲げる“彼”が見えた気がした。

ドン、と地面に転げる音と、発砲音が重なる。

反射的につむった目をひらく。

私はロヴィーノに抱きかかえられるようにして、半ば横に突き飛ばされたらしい。

瞬時に恐ろしい推測が脳裏をよぎる。

――“彼”が私を撃とうとして、それをロヴィーノがかばったのでは?
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