• テキストサイズ

【ヘタリア】周波数0325【APH】

第32章 回帰と代入と


痛みと混乱で思考が停止する。

私と同じように、隣でうずくまっているロヴィーノ。

無表情に立っている“ロヴィーノ”。

舞い上がる埃に咳き込みそうになりながら、思考より、足が勝手に立ち上がろうとする。

しかしすぐ床に押し返される。

目に見えない大きな手に押さえつけられているような。

自分の体重が象ほどにもなったような。

身動きが取れず、ゆっくり歩み寄ってくる“ロヴィーノ”を茫然と見ていることしかできない。

彼が近づくたび、透明な手はどんどん重くなっていった。

座りこむ体勢すら維持できなくなっていく。

かたわらのロヴィーノが私に手を伸ばしていた。

震える指先が私の腕をかすめる。

「お前……だけで……も」

苦痛に歪んだ顔と声。

それを見た彼は――憐れむような嘲笑で、口の端を吊り上げた。

瞬間、頭の中でなにかが弾けた。

一瞬にして脳が“怒り”に焼き尽くされる。

全身の血が沸騰し、血管内を加速するような、莫大なエネルギーが体を突き破った。

怒り――殺意に似た破壊衝動が、思考能力を排除して、脳を占拠する。

だから私は、彼がうしろに吹っ飛んだことを、いや、“私が吹っ飛ばした”ことを理解するのに、数秒を要した。
/ 378ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp