第31章 He want not to stay,
「なにがあったんですか?」
はやる気持ちを抑え、ロヴィーノに尋ねる。
「それが、俺もよく覚えてないんだ。すごく気分が悪くて、吐きそうになりながら角を曲がって、そこで変な奴に会ったところまでは覚えてる」
「変な奴?」
「青い髪の、女みたいに綺麗なやつ」
少し、ホッとする。
名前を言わないということは、知らない人物、つまり世界の面々の誰かではないということだ。
「なにか会話をして――今思うと、あのときの俺はおかしかったんだと思うが……」
ロヴィーノは言いよどむ。
彼のいう“誰か”について考えていると、ある人物が浮かんできた。
、、、、、、、、、
「撃ったし、撃たれた」
「もしやその人物は……って、え!?」
言いかけ、言葉を失う。
撃ったし撃たれた?
待てよ、ロヴィーノが持っていたのは、麻酔銃のはず。
出血させる力はないだろう。
じゃあ必然的に、血痕の持ち主は、“撃たれた”ロヴィーノとなる。
しかし、彼はいたって健康そのものだ。
あれほどの出血が、こうもすぐ治るのか? まさか。
相手も麻酔銃だったのか?
じゃあ本当にあの血痕はなんだったんだ……?