第30章 条件制御エミュレータ
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「ヴェーどこだよぉー!」
聞いてない、フェリシアーノは心の中でそう叫んだ。
目を覚ますと、二人の姿がなく、彼一人でこのゴーストタウンに立っていた。
離れ離れになるなんて聞いてない、それとも置いていかれた? いやいや、さすがにそれはない……と思いたい。
その場でつっ立っているわけにもいかず、フェリシアーノは町並みを移動し始めていた。
さっきから二人の姿を探しているが、そもそも人間が現れない。
一体この街はどうなっているのだろうか。
曇り空は、今にも雨を零しそうに寒々しい。
四車線あろうかという道路はただっ広くて、余計に孤独を感じさせる。
「兄ちゃん……どこ?」
公子がいなければ、正確な位置がわからない。
それどころか、帰ることすらできない。
アーサーがいなければ、「なにか」と争うような事態になった場合、彼だけでは対処しきれない。
なぜ二人はいないんだ?
フェリシアーノの頭を、嫌な想像が駆け巡った。
それを振り払うように歩く速度を上げると、十字路にさしかかる。
、、、、、
と同時に、ありえないものが見えた。
「……え?」
、、、
そいつは、こちらに手を振りながら歩いてきた。
それでいて、腹が立つくらいのんきで、陽気な笑みを浮かべていた。
その笑みは、寂寞としたゴーストタウンで、不自然なくらい浮いていた。
思わず目をこする。
、、
けれどそれは変わらない。
目を逸らしたいのに、そこで笑っている現実を否定したいのに、一瞬たりとも逃れられない。
「……お前、は――」
――いつかに交わした会話が、よみがえる。
「やぁ、フェリシアーノ」
目の前の人物は、フェリシアーノと全く同じ顔で巧笑した。