第29章 for dear my imaginary blank
「なっ、フェリシアーノ!?」
驚愕に目を見開くルートの視線は、フェリちゃんをとらえていた。
菊も不安げに、けれどどこか「止めても無駄だな」と諦めた目でフェリちゃんを見る。
彼は静かな表情を浮かべて、落ち着いた声で言った。
、、、、
「菊はやることがあるし、ルートはそれを手伝わなきゃならない」
フェリちゃんは、フランシスとギルに目を向ける。
「二人には、アントーニョ兄ちゃんをみててほしい」
二人は真剣な顔で頷いた。
憔悴したアントーニョの肩は、物も言わず力をなくしていた。
「あとは俺しかいないよ」
「しかしなにもお前が同行する理由なんて――」
心配からなのか、ルートは食い下がる。
そんな彼に、フェリちゃんは小さく微笑んだ。
「ねぇルート、"兄ちゃん"を助けるのに理由が必要?」
「……っ」
ルートは、言おうとしていた全ての言葉を押し込められたように、声を詰まらせた。