第29章 for dear my imaginary blank
菊がアーサーに尋ねる。
「電車の快速と各駅停車のようなものですか?」
アーサーは一瞬キョトンしたのち、ためらいがちに頷いた。
「ゴーストタウンが寄り道なのか、もともと知らない内に経由しているものかはわからない。
もともと経由するものだとすると、
公子がいなければ快速となり、ゴーストタウンを通りすぎる。
逆に公子がいれば各駅停車となり、ゴーストタウンにとまる」
テレポートを電車の運行に例えているようだ。
“私”という要素が、快速を各駅停車にする。
よって、本来は通りすぎる駅――ゴーストタウンにとまる。
……ということだろうか?
だが、おかしな点が二つある。
なぜ、今まで私だけがゴーストタウンを認識できていたのか?
なぜ、今回はアントーニョとロヴィーノも認識できたのか?
「今ここで、テレポートの仕組みを論じるつもりはない。
つまり言いたいことはだ」
アーサーが机に集まったみんなを見回して、その視線の終着点を私に据えた。
「ロヴィーノを助けにゴーストタウンへ行くためには、公子の同行が必須ってことだ」