第28章 on the planned system
思い出せば、一連の騒ぎと関わってきて、随分“驚愕”を体験してきたと思う。
人はあまりに驚くと、“停止”する。
思考にしろ、動作にしろ、中断させられるのだ。
多分、脳で処理が追いつかなくなっているんじゃないかと思う。
そんな考えが、電源を切ったように途切れた。
眼前の光景が受け入れがたく、まばたきをくり返す。
なんで? と「?」が頭の中で踊っている。
――目の前で、アントーニョが眠っていた。
私の方を向いて寝転がり、穏やかな寝息を立てている。
つまりここはベッドの上であり、なぜか私もその上におり、なぜかアントーニョの隣に寝っ転がっており、部屋には柔らかい昼下がりの日差しが降り注いでいる。うーんシエスタ日和。
そんなもはや笑いそうな状況を確認してから、ここまでの経緯を思い起こす。
……えーと――
深夜ギルとトリップして、戻ったらまさかの早朝。
日常を終えて帰宅後、週末まで待てず、テレビが「ニュースナインです」と21時を知らせるのを聞きながら、ラジオをつけて、目を開けたら――
かつてないほど斬新なトリップ先にいた、ということらしい。よーし、やっと冷静になれてきた。
、、、、
と思った矢先、いつものが訪れる。
トリップ直後に襲われる熱、吐き気、目眩。
けれど今回は、眠気が強かった。
いい香りと、心地よい暖かさに部屋が包まれているのも、眠気に拍車をかける。
――いや、ここで眠るとか、今までで一番やばくね……
そんな抵抗もかなわず、深く優しい重みが瞼にかかる。
「……トマトをな……あかんて……」
アントーニョの寝言を耳にしながら、私の頭は枕に沈んでいった。