第2章 霞む赤髪に、夢
挨拶をおえた放課後の教室の喧噪も束の間で、
ゆっくりと教室の外へと遠のく。
「〜?おーい?」
「ひっ!」
席に座る私の後ろからひょこっと顔を出して来たアキラに驚いて、素っ頓狂な声を上げる。
「なーんだよ、ひっ!って。今日の日誌の続き、はやく書いちゃおーぜ」
「あ、そか。今日アキラと日直だっけ。」
「なんだよそれ〜」
アキラはいつもどおりけらけらと明るく笑い、私の座席の前の椅子に逆向きに座った。
私と向かい合う形になり、大きめのリュックをどさ、とおろしたあと、私の机に日誌を置く。
「が移動教室の準備とかしてくれたし、大体書いといたけど。」
今日の日付のページには、アキラの文字がそれなりに既に埋まっていて。
「あ、さんきゅ、じゃあ今日のまとめと出欠名簿の確認と…黒板消しだけかな?」
そういい、もう一度前に目をやると、既に去ったと思っていた先生とばっちり目が合った。
「あ、」
「…ん?どうした?」
先生がいつも通りにっこり笑って、名簿を小脇に抱えた。
「あ、アキラと2人っきりの時間に水を差すなって?んも〜ちゃんったら素直じゃないんだから!はいはい老いぼれはすぐに出ますよ〜」
「だ、だれもそんな事言ってないじゃん」
「先生の茶化し方ガキっぽすぎ!」
「それで耳真っ赤なアキラの方がガキっぽいけどな〜」
「んな!うるせー!さっさと出てけ!」
「はいは〜い。アキラももお疲れさま。」
そのときに、先生の右手がいつものジェスチャーをしたのを私は見逃さなかった。
(日誌書いたら、準備室だな。)
「じゃ、書けたら準備室までよろしく〜」
「了解でーす。」
私たちの不思議なやり取りにも、ご立腹のアキラは気づかなかったみたいで、
私は小さく笑って、日誌に目を落とした。