第2章 霞む赤髪に、夢
「…よし、黒板消しも完了だ〜」
私がぱっぱと手を払うと、アキラも教卓にひょいと腰掛けた。
アキラとは、入学当初からウマの合ういい友達で、何も無い日は2人でだらだら放課後に教室で勉強したりするような、そんな仲だった。
運動神経抜群、太陽みたいに明るいキャラクターで、常に女の子の黄色い声は絶えないような男で。
「うい、後は日誌出しに行くだけかね。」
日誌を指先でバランスゲームのように乗せるその無邪気な表情も、きっと愛される理由の一つなのかな、なんて思いながらアキラをぼんやりと見ていた。
「な、。」
「なに?」
アキラに手招きされ、私は彼の正面に立った。
すると、彼は日誌を自分の傍らに置いたかと思うと、
「んえ?」
アキラはひょいと私の右手を取り、それをアキラ自身の口元に近づけた
「え、ちょ、なにきもいきもい」
「…匂い、とれてねーぞ。」
急に真面目になったアキラの表情と声に、どきりとする。
「な、んの」
「た、ば、こ。」
一応声を潜めて、アキラは私に伝える。
「う…」
「…ま、悪さすんなら徹底的にな。」
元々私が喫煙者という事は、彼も知っていて、
けれど学校で吸うようになったことや、先生と一緒に居る事は、一番仲のいい彼にも言っていなくて。
私の人差し指と中指の間を、親指でこするようにした後、ニッと彼は笑った。
けれど、そこで私は違和感を覚える。
「あの」
「なに。」
「手、離して、?」
「やーだ。」
そのまま、上手にゆるゆると指を絡める形でアキラは私の手を握った。
「…ずりぃよ、ほんと。」
また真面目な表情になったアキラはその手を繋いだままゆっくりとおろす。
「…え?」