第10章 赤い一番星は
「今日まで、ありがとうなのか、これからよろしくなのかは…あんま期待してないし、ゆっくり考えな」
「アキラ」
「ん?」
「付き合お、ちゃんと、うん…ちゃんと。」
「…え?」
私はず、と一度鼻をすすり言葉を紡いだ。
「まだ、先生のことも、消えてない、けど、そ…それでも許してくれるなら、ちょっとずつ、アキラのこと、好きになる。」
「…いいんだ、な」
「うん」
(これで、太陽みたいに笑うアキラが見れるなら)
きっと朴も、泉も、タツキ先輩も喜んでくれる。
(そして、先生も)
アキラはものすごく驚いたようで、先ほどから、あのー、そうだな、えっと、え?となんども言葉にならない言葉を紡いでいる。
ちょ、ちょっとまてな、といい、大きな深呼吸が聞こえる。
「…うっし、、ゆっくりでいいから、ちゃんと俺のこと見れるようにするから。頑張るから。」
アキラの声はまだ緊張していて、なんだかおかしくて小さく笑った。
「んだよ」
「ううん」
「これから、よろしくな」
「うん。」
「い、一旦切るぞ」
「うん。」
「本当にだな?もう訂正はきかねーぞ?」
「…ほんとだって」
「アキラ」
(すきだよ)
自分でも思っていた以上にすんなり、気持ちを言葉に乗せることができて、少し驚いた。けれど私よりアキラの方が驚いていて。
「…わー、夢、みて、え」
「現実だよ。」
「俺、頑張るから、ほんとに」
どこか、切なさをはらんだ決意表明に、苦笑いを浮かべる。
夏の夜空が私たちを包む。
(すこしずつ、だ)
一番星は赤く染まる。
はやく私の中も、アキラでいっぱいになればいい。
(先生じゃ、なくなればいい)
その星を捕まえるように、私は夜空に手を伸ばした。
(続)