第10章 赤い一番星は
『神生アキラ』
3コール待って、私は電話に出た。
*
「もしもし」
ほんの少しかすれた、けれど聞き慣れたアキラの声が聞こえる。いつからかこの声も心地よくなっていて、なんだかこそばゆい。
「もしもし、アキラ?」
「ん、そだよ。」
「どうしたの?」
「…んー、なんとなく」
なんとなくなんかじゃ、無いくせに。私は心の中でそう思って、唇を噛む。
「ね、」
アキラはごほ、と小さく咳き込んでから、言葉を紡いだ
「今日で、やくそくのひと月が経ちました。」
手紙でも読んでいるのだろうか、少しぎこちない口調でアキラは話を続ける。
「俺は、すっげーたのしかったです。と一緒にいられて、びっくりするぐらい、楽しかったです。」
よく聞いたらその声は震えてて
「すこしでも、好きになってもらえるように努力したつもり、だけど、叶わないなら叶わないで素直に身を引く。けど、最後に一つだけ。」
「アキラ…?」
不思議な間に耐えられず、彼の名前を読んだ後、彼は優しくこういった。
「俺はやっぱり、世界一、が好きだ。」
彼の言葉のまっすぐさは、いつも私の心の隙間に柔らかく溶け込んでくるものだから。気づけば私の頬には涙が伝っていた。