第9章 沈む、沈めない、沈む
長い髪を綺麗に結い上げるのなんて何年ぶりだろう。女子寮の入り口の鏡にうつった自分に思わず笑う。
(ネイルも一応塗り直したし。まあ…悪くないかな)
リップもいつもよりも赤めのティントを使って、何方かと言えば色っぽい感じに仕上げたけれど
(…まあまあ、恥ずかしいな)
恋人とデート、というのは今までにも数回した事はあるけれど、夏祭りとかイベントごとをしっかり過ごした事は無くて。
「よっし、行くか。」
寮の前を出てすぐ、アキラの姿を見つける。
赤い髪が綺麗に引き立つ紺色のシンプルな甚平。浴衣だと動きづらいという彼らしいチョイスに、思わず笑った。
(やっぱり、格好いいな…)
先生とも、泉ともベクトルの違う凛々しさに、少し胸がざわつく。
「!」
「アキラ、お待たせ。」
アキラは私の事をつま先から頭のてっぺんまで見て、わなわなと震える。
「…く〜、なにそれ、超綺麗!」
予想してたより遥か上だわ、と照れ笑いしつつ言うものだから、私も思わず笑う。
「じゃ、行こうか、。」
当たり前のように差し出された右手に、ちょっと照れながらも左手を重ねた。
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