第8章 闇夜に溶かして
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もう一度目を覚ましたのは、部屋の窓から差し込む西日がまぶしくて、だった。
(ゆう、がた…)
おぼろげな記憶を辿り、ここがアキラの部屋だという事を認識して、ゆっくり目を開く。
ぬくもりを感じる手のひらから順番に目線を移すと、ベッドに突っ伏している赤髪が目に入った。
「…ありがとう、ごめん、ね…」
空いている手で、アキラの髪を撫でる。
(ずっと、握ってくれてたんだ。)
なんで今まで、先生にこだわってたんだろう。
こんなに近くに、こんなに一生懸命、私を見つめ続けてくれている人が居るのに。
私はさら、とアキラの髪に指を通した。
(本当に、幸せにして、くれる?)
心の中でそう問いかけて、私はもう一度目をつぶった。
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